2022年5月22日日曜日

明治用水・工業用水

 矢作川から農工業用水を取水する堰「明治用水頭首工(とうしゅこう)」で、川底に穴が開いて大規模な漏水が発生、5月17日午後に明治用水から水が取水できなくなった。このうち、工業用水については19日午後7時から段階的に各事業所の受水を再開した。東海農政局が応急対策として仮説ポンプを設置したことから、工業用水は通常の3割ほどで供給できるようになったが、農業用水は21日まで供給が止まったままとなった(幹線水路に充水を続け、22日午前に一部で水が出る状態になったと発表)。なぜ工業用水の回復が早くできるのかと疑問を感じたが、愛知県企業庁水道部の発表した報道資料で、工業用水は安城市の工水分水工で農業用水と分離されて安城浄水場に送られて浄水処理、そこから農業用の水路とは異なるコンクリート水路で各事業所に供給していることが分かった(上図も報道資料から転用)。

 安城浄水場は安城市福釜町の田園地帯にあり、昭和50年5月から給水を開始し、現在、1日あたり約14万3千立方メートルの給水を行っている。給水地域は岡崎市の一部、半田市、碧南市、刈谷市、豊田市の一部、安城市、西尾市の一部、高浜市、みよし市、東浦町、武豊町、幸田市の9市3町で、自動車関連企業を中心に131事業所が利用している。トヨタ自動車の本社工場はもちろん、各種報道ではデンソー、豊田自動織機、愛知製鋼、さらにJERAの碧南火力発電所、大阪ガスグループの石炭火力発電所なども水の供給を受けている。

 明治13年に完成した明治用水によって、大正末期から昭和初期にかけて安城を中心とした碧海郡は「日本デンマーク」と呼ばれるほどの農業地帯へ発展した。しかし、昭和30年ごろから始まった高度成長期には自動車関連企業の大々的な進出などもあって、同用水を管理する明治用水土地改良区によると受益面積が著しく減少、現在はピーク時の半分となったという。こういった背景から、愛知県が昭和50年から明治用水を利用した西三河工業用水道事業を開始、工業用水としても活用されるようになった。今回の漏水事故によって、農家にとって本来は農業用という意識が強いが、明治用水が農業用よりも工業用としての比重が高まっていることが図らずも露わになった。しかも、中核を担うのは安城市の田園地帯にある安城浄水場である。

一般人は立ち入り禁止の安城浄水場(下の写真も)

明治用水土地改良区の事務所が入る安城市の明治用水会館

喜平公園にある水路図

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