西尾市吉良町の桜の名所として知られる黄金堤(こがねづつみ)は、吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)が築いた堤防。吉良義央は元禄赤穂事件を元にした創作作品『忠臣蔵』では敵役に描かれているが、地元吉良では名君とたたえられている。領地の大部分は現在の吉良町にあり、 言い伝えによると、大水のたびに被害に苦しんでいた水害から領地を守るため、領民とともに長さ約180メートル、高さ約4メートルの堤防を一夜で築いた。
黄金堤の階段横に西尾市教育医委員会が設置した史跡案内板には次のように記載してある。「吉良さん善政の最たるものは、この黄金堤の築堤である。当時、増水のたびに隣藩上流平野の水がこの細い谷を抜けて南下し、今の吉良町の新田地帯はそのつど大水に悩まされた。吉良さんは、この山間の約180メートルを堤防でふさぎ、下流8千石の田園を水害から救った。領内老若男女こぞって工事に参加し、一晩で完成したと伝える。ひき続き関連の用水路が整備された」。その後は水害がなくなり、良田となったことから、人々はこれを「黄金堤(こがねづつみ)」と呼んで遺徳をたたえたという。
現在、堤には桜の大木がずらり並んで、薄いピンク色の花を咲かせている。品種は江戸末期に生まれたと言われる一重咲きの染井吉野。桜並木の先は竹藪で、通れないように堤の道は塞がれている。近くに名鉄電車は走っていないが、堤の下には30台近く止められる駐車場もあり、平日でも見学に訪れる家族連れなどは多い。
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