2023年7月23日日曜日

太平洋戦争銃後の国民歌謡『隣組』は町内会に通底

 

 ちくま新書から6月に発刊された太平洋戦争研究会『写真が語る銃後の暮らし』では、「国民の戦時体制編入の完成」として大政翼賛会が作られたと説明、国民歌謡『隣組』を取り上げている。「とんとんとんからりんと隣組、格子を開ければ顔馴なじみ、まわしてちょうだい回覧板、知らせられたり知らせたり」という明るいメロディーの歌だが、相互監視の密告社会が反映していたと解説している。

 同書では次のように書いている。〈内務省訓令によって農村では部落会(五人組、十人組など)、都市では町内会(隣組など)という「隣保班」が作られた。生活必需物資の配給が隣保班を通して行われたため、住民の全てがこの組織に加入。1941年4月には全国で120万組に達し、国民の戦時体制への編入が完成した。〉 国民歌謡『隣組』の歌詞にあるのは、業務や行事の通達の前に一軒ごとに手渡しで回されていたのが官製の回覧板。

 戦後、GHQの指令によって戦争協力組織であったとして部落会、町内会は廃止されたが、多くの地域では事実上存続し、サンフランシスコ平和条約締結後に完全復活した。呼称として部落会、隣組は使われなくなったが、町内会、自治会として戦前、戦中の機能はほぼ維持、回覧板を使った手渡しによる情報伝達も大半の地域で行われている。2番、4番の歌詞は現代生活とちょっと異なるが、国民歌謡『隣組』の世界は今も変わらない。回覧板を使った情報伝達、町内の防火・防犯活動など、まさに歌詞の通りと言っても言い過ぎではないだろう。

 ウェブサイト「世界の民謡・童謡」では、次のように国民歌謡『隣組』を書いている。

 「とんとんとんからりんと隣組♪」が歌い出しの『隣組』は、1940年6月に初放送された日本の戦時歌謡。作詞:岡本一平、作曲:飯田信夫。「ドリフの大爆笑」オープニングテーマ曲の元歌・原曲として知られるほか、サントリーウイスキー「トリス」CMソング、メガネドラッグCMソングなどで替え歌されている。作詞者の岡本一平は、芸術家・岡本太郎の父親。東京美術学校西洋画科を卒業後、朝日新聞の漫画記者として人気を博し、一時代を築いた。

 歌詞

 とんとん とんからりと 隣組
 格子(こうし)を開ければ 顔なじみ
 廻して頂戴 回覧板
 知らせられたり 知らせたり

 とんとん とんからりと 隣組
 あれこれ面倒 味噌醤油
 御飯の炊き方 垣根越し
 教えられたり 教えたり

 とんとん とんからりと 隣組
 地震やかみなり 火事どろぼう
 互いに役立つ 用心棒
 助けられたり 助けたり

 とんとん とんからりと 隣組
 何軒あろうと 一所帯
 こころは一つの 屋根の月
 纏(まと)められたり 纏めたり


0 件のコメント:

コメントを投稿

ららぽーと安城のテナント187店舗を先行発表

  三井不動産は安城市大東町に開発中の商業施設名を「三井ショッピングパーク ららぽーと安城」に決定、来年4月に開業すると発表。同時に、全テナント約210店舗中187店舗を先行して明らかにした。敷地面積は3万1900坪で、地上4階建ての店舗棟(3階までが店舗)と3棟の地上6階建て立...