関東大震災から100年、同震災直後に起きた事件をもとに描いた群像劇『福田村事件』が9月1日から全国公開された。愛知県では名古屋市名駅のシネマスコーレで公開と中日新聞で報道されたが、実は刈谷市の刈谷日劇でも1日から上映されている。しかも、14日まで1日の2回上映(通常は1日1回の上映)、15日からは1日1回となったものの21日まで上映される。
映画のチラシに書かれている「序説」は次のような内容。
1993年9月11日11時58分、関東大震災が発生した。そのわずか6日後の9月6日のこと。千葉県葛飾郡福田村に住む自衛団を含む100人以上の村人たちにより、利根川沿いで香川から訪れた薬売りの行商15人の内、幼児や妊婦を含む9人が殺された。行商団は、讃岐弁で話していたことで、朝鮮人と疑われ殺害されたのだ。逮捕されたのは自警団8人。逮捕者は実刑となったものの、大正天皇の死去に関連する恩赦ですぐ釈放された。これが100年の間、歴史の闇に葬られていた「福田村事件」だ。
監督はオウム真理教などをテーマにしたドキュメンタリー映画を手がけてきた森達也で、初めて劇映画に挑戦した。大震災によって退役軍人などによって自警団が組織され、情報のあまり入ってこない村の住民たちが朝鮮人が襲ってくるというデマに踊らされる群集心理が描写される。特に後半40分間がクライマックスで、出演者それぞれが迫真の演技を見せている。NHK『映像の世紀バタフライエフェクト』では関東大震後、東京で防災のために生まれた町内会が次第にその目的を変え、国家総動員体制を支えていくと語っていた。自衛団、町内会が関東大震災を機に生まれ、昭和の大政翼賛会につながっていったということか。
映画は主人公と見られる帰郷した夫婦の川を下るラストなど、ちょっとあざとい気がする場面もあるが、今日の日本社会にも通じるテーマの力か、何となく2時間17分の上映時間が短く感じらるほど見入ってしまった。平日の昼前という時間帯だったが、20人以上と刈谷日劇には珍しいほどの観客が詰めかけていたのも驚きだった。個人的な思いとしては、もう少しドキュメンタリー監督らしくシンプルなストーリーにして欲しかった。
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