名鉄西尾線は新安城駅を起点に吉良吉田駅まで走っているが、このうち西尾駅から吉良吉田駅間と蒲郡線全線を「にしがま線」と呼んでいる。このにしがま線は沿線自治体の西尾市と蒲郡市が維持費を一部負担している赤字路線で、新型コロナ禍で赤字が拡大し、存続が危ぶまれていたが、昨年度の営業実績では乗客数が7.4%回復した。しかし、依然として赤字が約7億5千5百万円に上ること(中日新聞発表)から、今後の運行継続に向けて名鉄との交渉を進め、同時に乗客数拡大に向けた様々な施策を打っていく計画という。
にしがま線では、昭和の時代が漂うレトロな木造の西幡豆駅と東幡豆駅の駅舎が昨年11月に取り壊された。西幡豆駅舎は昭和35年、東幡豆駅舎は昭和34年に建築され、それぞれ約60年経過、老朽化が著しくなったことから壊された。もともと無人駅だったが、駅舎と共に発券機なども撤去されたため、ホームに乗車駅証明書発行機が設置された。東幡豆駅には駅舎内に近くにあるトンボロ干潟(干潮時に道が現れ、島に歩いて渡れる)の写真も掲示されていたが、もちろんその写真も消えた。ただし、駅舎横のトイレだけは改修されて残っている。
取り壊される前の東幡豆駅 |
10月19日付の日経新聞デジタル版によると、乗客数拡大に向けたてこ入れ策として、来年には東幡豆駅を「トンボロ干潟の見える駅」のような副駅名を付ける計画があり、さらに西幡豆駅と合わせて同駅を改修する案が浮上しているという。また、近くの西浦駅は駅舎をリニューアルする予定で、今年3月には西尾駅に誰でも自由に弾ける駅ピアノが設置された。このほか、電車編、西尾編、蒲郡編のにしがま線PR動画も制作され、9月にYouTubeで公開された。
「最近は、鉄道を使う機会は少なくても列車が走る風景を大切にする風景を大切にすることが『センチメンタルバリュー(情緒的な価値)』と呼ばれる。鉄道への過剰な評価を突き放す視点と言える。にしがま線も、現実的な価値を見極めようとされている」(日経新聞デジタル版)。三河湾を臨む丘と集落を縫うように走るワンマン列車、採算性だけで見えない価値がにしがま線にはある。
吉良吉田駅を蒲郡に向けて出発する赤い列車 |
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