『新編安城市史』で住民組合(1962年から町内会)の問題点として、農村部の「地域ぐるみ」の封建的で地元主導的な慣習を指摘している。こういった慣行の代表例が地元神社の氏子費・神社費の一律徴収。地域ぐるみの体質を持つ地域では、町内会に入っている住民全員を神社の氏子としている。第2次大戦後、かつて村社、郷社、県社として地方自治体が運営していた神社は宗教法人として独立した運営に切り替わった。しかし、常駐する神主のいない規模の小さい旧村社は総括宗教法人神社本庁(下部団体に愛知県神社庁)に加盟しているものの、町内会が旧村社を運営せざるを得ない状況に陥っている。もちろん、新しい住民の増えた地域では宗教の多様化も進み、町内会が全住民を神社の氏子とすることは難しくなっている。
全住民を氏子として神社費(氏子費)を徴収する地区では、正月期間中に氏子参拝者で少しは賑わいを取り戻せているのだろうか? 正月2日に榎前町の八剱神社と福釜町の神明社、高棚町の神明神社を訪問した。榎前八剱神社では門松が飾られている以外は普段と変わらなかったが、福釜神明社は鳥居の前の左右に紙で製作した今年の干支・ウサギの飾りを設置、正月らしい雰囲気になるよう工夫を凝らしていた。
12月28日付の中日新聞西三河版では、針金の枠に紙を張り付けて、高さ1.5メートルのウサギの飾りを作業中の福釜神明社を取材、「1966年度生まれの住人14人で作る『午未(うまひつじ)会』のメンバーらが、来年のえと・ウサギの飾り付けを行った。2012年から始まった恒例の取り組みだが、えとが一巡した今回で飾り付けは最後となる」と書いている。ウサギの飾りの後ろでは、「12年間ありがとうございました」の文字を入れて、今までの飾りをカラープリントで紹介している(飾りは8日昼まで)。
また、福釜神明社では拝殿前に「新年祭御神酒等芳名簿」として、御神酒を奉納した住民、企業を一覧表にして掲示。一覧表では1番組から10番組まで組ごとに壹升、貮升、四升を奉納した氏名、企業名を発表しているが、多い組で20人(企業含む)、少ない組で5人と地域ぐるみの慣習に差が出てきているようだ。それでもざっと合計すると御神酒は160升を超えるので、かなりの金額が神社に入ることになる。
一方、高棚神明神社では社殿の前に巨大なボードを立て、御神酒などの奉納者をランダムに書き出して掲示。福釜神明社よりも氏名の掲示が派手で、地域の保守性が滲み出た格好である。また、福釜神明神社と違って奉納金が極端に多いことも特徴で、2千円が17人、3千円が28人、5千円が7人で、1万円や1万5千円、2万円もあり、合計すると20万円以上となっている。これに御神酒料(150本前後)を加えると50万円以上になるとみられ、住民から一律年間2千円の氏子費を徴収する必要があるのか疑問に感じてしまう。
2日の福釜神明社、榎前八剱神社、高棚神明神社の境内の状況報告では、散歩している住人を1人見かけただけで、いつものように閑散とした雰囲気だった。どこの旧村社も正月といっても宮司や町内会の宮係などが常駐して神事を行っているわけではないので、似たような状況かと
思われる。
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