安城市図書情報館を中核とした中心市街地拠点施設「アンフォーレ」について、開館までのいきさつなどをまとめた書籍『アンフォーレのつくりかた』が2月に刊行された。図書情報館で貸し出しを行っていたが、数冊ある蔵書が貸し出し中となっていたため、予約後かなりの日数(10日後くらいか?)が経過してようやく借りることができた。残念ながら定価が3080円(税込)とちょっと高かったので、とりあえず購入するのは諦めた。
同書は発行所が東京都文京区の樹村房で、A5判、320ページ。タイトルの通り、前神谷市長や前三星副市長、建築家、市役所職員、図書館員など様々な立場の人のアンフォーレに対する関わり方や思いを収録したもの。サブタイトルは「図書館を核とした賑わいの複合施設」。編者は図書館総合研究所主任研究員の岡部晋典氏で、市職員、図書館員に執筆してもらうと共に関係者や利用者ら25人にインタビュー。「直接携わった人の生の声を集められました。他の自治体が新図書館をつくる時の参考になる一冊」と同氏(2月24日付安城ホームニュース)。
中心市街地に立地するアンフォーレ |
明るい1階エントランスホール |
食品スーパーが入れ替わった民間施設棟 |
本文で驚いたのは、「にぎやかな図書館」の小見出しで図書サービス係の市川さんがある日の光景として、「旅行ガイドを広げて囁き交わす初老の夫婦、サイドイッチ片手に資料を眺めるビジネスマン風の男性、机上にタピオカドリンクを並べながら問題集に取り組む女子高生三人組、ベビーカーを連ねて絵本架を巡るママ友たち」と記載。つまり、「他の利用者の迷惑にならない範囲内での会話・飲食を認めている」、常識はずれの図書館だという。
実はコロナ感染が広がった中の2020年4月以降にしかアンフォーレに行ったことがなかったので、会話・飲食自由といった状況の図書情報館を経験したことがない。コロナ感染症拡大防止対策として「食事はご遠慮いただいております」とホームページに記載しており、館内で飲食している来館者を見たことがなかった。しかし、問い合わせたところ、現在ペットボトル、水筒、ふたのある容器、未開封の缶・紙パックの持ち込みは可能で、ペットボトルの飲料水を飲みながら本を読んでいる来館者はいるという(今まで個人的に見たことがなかったが、マスク着用が個人の判断となったことからペットボトル持ち込みも出てきたのかもしれない)。
2021年2月8日の日経デジタル版では、「おしゃべりや飲食ご自由に 愛知の図書館、異例の人気」の見出しでアイフォーレを取り上げた。「活字離れと言われる中、愛知県安城市の私立図書館が驚異的な実績を上げている。開館から3年連続で来館者100万人超、同規模自治体では全国一の年間個人貸出数計200万冊を達成した。飲食や会話も自由などの取り組みが奏功している」と記載。本が心配だが、汚損した本はないという。
『アンフォーレのつくりかた』では、愛知工業大学中井教授が「アンフォーレは館内全体がにぎやかで、どのフロアも飲食可能でとても過ごしやすいと感じたが、逆に『静かな環境』が少ないのではないかとも思った」と指摘。そして、「音の感じ方も、人によってさまざまであるため、やはり静かな環境も各階に用意してあげたい」と提言している。いつ会話・飲食自由といったコロナ感染症が出現する前の状況に戻るかは分からないが、やはり中井教授の提言のように図書館には静かな環境も必要だと思う。
また、街の賑わい創出のため更生病院の移転した跡地にアンフォーレは建築され、図書館としては大成功を収めた。しかし、「中心市街地は活性化したのか」の問いに、市議会議員は「していないと思います。ズバッと言うと。していないですね。まちに人が出ていかない。図書館だけでは無理でしょう」と本文の中で回答している。実際にアンフォーレ内がイベントで集客している時でも、周りの商店街にほとんど賑わいは感じられない。
日経デジタル版 |
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